頭のこめかみをぶつけた!強打した!激痛が走ったときの対処法!
※この記事は、脳外科医の先生に記事の執筆を依頼しました。
つまずいて転んだり、滑って転倒したりして、頭のこめかみのところを強くぶつけた経験がある方はいらっしゃると思います。
ぶつけたところに激痛が走ったり、痛みが全然よくならなかったりすると、すごく心配になりますよね?
今回は、こめかみを強打して激痛が走った時に考えられる頭のケガや対処法、そして時間が経過してから起こってくる怖い脳の病気などについて詳しく解説していきます。
今回の流れ
頭のこめかみを強打!こんなぶつけ方が危険!
こめかみを強打!想像しただけでも痛いですよね…。もちろん経験もしたくないですよね。こめかみに限らず頭を何かで強打した場合には、ぶつけ方によって頭のケガの重症度が変わってきます。危険な頭のぶつけ方は以下のようになります。
・車やバイクにはねられた
・車やバイクから放り出された
・高いところから転落した
このようにスピードの速い交通事故や落下事故でケガをすることを「高エネルギー外傷」と呼びます。
このような状況でこめかみなど頭を強打すると、それだけ脳が受けるダメージが強くなります。
ケガをした直後に何も悪い症状がなくても、命に関わるような状態に急変する可能性もあるので注意してください。
こんな症状は危険なサイン!<4つの症状>
頭のこめかみをぶつけた場合、そのぶつかったところがズキズキしてとても痛くなります。
氷などで冷やして少しずつ治っていくのを待つより仕方ありません。
しかし、あまりにも強くぶつけた場合は本当に大丈夫かな?と心配になると思います。
ここでは、重大な脳のケガが隠れている可能性がある4つの危険なサインを紹介します。
こめかみをぶつけてから6時間以内にこれらの症状があれば、急いで病院を受診しなければなりません。
おかしいなと思ったらすぐに救急車(119番通報)を呼んでください!
はげしい頭痛・嘔吐
ぶつけた頭のこめかみのところが痛いだけでなく、徐々に頭全体が激しく痛くなってきて、吐き気がしてくるような場合は危険です。
脳震盪(のうしんとう)でも頭痛や嘔吐を起こすことがありますが、頭の中に出血を起こしている可能性もあります。
症状が悪化する場合は、手遅れにならないように急いで脳神経外科のある病院を受診してください。
手足の動きや話し方がおかしい
手足の動きや話し方がおかしくなると更に危険なサインになります。
これは頭の中の出血が徐々に大きくなり、脳を圧迫している症状と考えられます。
放っておくと手足の動きが戻らないだけでなく命の危険がでてきます。
自家用車で病院を受診していては間に合わなくなるので、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
居眠り
こめかみを強打した人がうとうとして、いねむりをし始めたら要注意です。
まず呼びかけてみて反応を見てみましょう。
意識がはっきりしないとか、目を覚まさない時はキケンです。
この時、決して体をゆさぶったりするのは避けてください。
頭の中で起きているかもしれない脳の出血や腫れがひどくなる可能性があります。
必ず救急車を呼んでください。
けいれん発作
こめかみを強打したあと、急に全身に力が入って硬直し、手足を強く震わせて気を失うような状態になれば、それは「けいれん発作」を起こしています。
頭の打った時に例え軽い怪我でも、いわゆる「打ちどころが悪い」時にはこのけいれん発作を起こす場合があります。
早く治療しないと重い後遺症を残す場合があるので、この場合もすぐに救急車を呼ぶ必要があります。
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誰にでもできる!こめかみを強打した人への3つの応急処置
あなたの目の前でこめかみを強打して倒れた人がいたらどうしますか?
スポーツをしていて相手の選手と頭をぶつけたり、階段で足を滑らせた人が転落して床で頭をぶつけたり…さまざまな状況に遭遇する可能性があります。
もし倒れた人があなたにとって大切な人だとすればどうでしょう?
何もできず、もしものことがあれば一生後悔することになるかもしれませんよね。
ここではどんな人でもできる「こめかみを強打した人に対する救急処置」の方法3つについて解説しようと思います。
助けを呼ぶ
まずは頭を強打して倒れた人の肩などを軽く叩きながら呼びかけてみてください。
もし反応がなかったり様子がおかしければ、周りに助けを呼びましょう。
実はこの「助けを呼ぶ」ということが最も重要になります。
意識の悪い人を目の前にした時に、お医者さんや看護婦さんでなければパニックに陥るかもしれません。
このような状況では冷静に物事を判断することが難しくなりますが、介助できる人がたくさん集まれば、その倒れた人を安全な場所に移動したり、救急車を呼んだりすることができます。
応急処置をする
介助できる人が集まれば応急処置を行います。
こめかみを強打するようなケガをした場合には、首の骨や神経を痛めている可能性があります。
安全な場所へ移動する時は、首に負担がかからないように力を合わせる必要があります。
また嘔吐したり口の中に吐物が詰まっている場合は、体ごと頭を横に向けて誤嚥を予防し、気道の確保に努めて下さい。
頭以外にもケガをして出血している場合は、ハンカチなどで傷口を圧迫するなどして可能な限り止血を試みてください。
心肺蘇生
次に胸とお腹の動きを観察してみてください。
呼吸をしていなかったり、胸やお腹の動きが普段通りでなければ「心臓が停止している」と判断しなければなりません。
周りの人と協力して、できるだけ早く胸骨圧迫による心臓マッサージや人工呼吸を開始する必要があります。
こうなってくると自分一人では難しいですよね?
やはり「助けを呼ぶ」ということが最も重要だということがわかります。
これは危険!こめかみを強打したとき命にかかわる脳のケガ4つ
こめかみを強打した時に命にかかわるような脳のケガを起こすこともあります。この代表的な脳のケガを4つ紹介します。
脳挫傷
頭を強打した時に頭蓋骨の中で脳が揺さぶられ、頭蓋骨の内側で脳が叩きつけられて壊れてしまうことがあります。
脳は豆腐のような硬さなので、硬いものにぶつかると簡単に崩れてしまいます。
これが「脳挫傷」です。
脳挫傷を起こした部分と、その周りの脳がどんどん腫れてきます。
脳の腫れにともなって意識が悪くなったり、ひどい場合は呼吸が悪くなって死亡する場合があります。
頭蓋骨骨折
こめかみのところには「側頭骨」と呼ばれる骨があり、この側頭骨によって脳が守られています。
しかしこの側頭骨は非常にうすい骨なので、突発的に強い力が加わると骨折することがあります。
骨にヒビが入っただけであればあまり心配はありませんが、頭の中に出血をしていたり陥没するような骨折は手術になる場合もあります。
ぶつけたところが凹んだりしていると危険です。
急性硬膜外血腫
脳は頭蓋骨の下で「硬膜」と呼ばれる硬い膜に包まれて守られています。
頭蓋骨を骨折するようなケガをした時に、この骨折した部分から出血して硬膜の外側に血液が溜まってくることがあります。
これが「急性硬膜外血腫」です。
この急性硬膜外血腫が大きくなってくると脳が圧迫されるようになってきます。
脳が圧迫されると激しい頭痛が起こったり、気分が悪くなって嘔吐したりします。
さらに血腫が大きくなると意識が悪くなってくるので、緊急手術が必要になります。
急性硬膜下血腫
硬膜の下に出血した血液が溜まり、その血腫によって脳が直接圧迫される病態のことを「急性硬膜下血腫」といいます。
頭の中の出血が続いている場合が多く、血腫が脳を直接圧迫するので意識がどんどん悪くなり、亡くなってしまう人や後遺症で寝たきりになってしまう人も多いです。
緊急で脳の手術を行い、頭の中の血腫を取り除いて出血している部分を止血しなければ命が助かりません。
手術をしても脳が腫れてくることが多いので、脳の圧力を下げる目的で頭蓋骨を外したままの状態にしておくこともあります。
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安心できない!頭のこめかみを強打したあとゆっくり出てくる3つの脳の病気
こめかみのところを強打しても、ぶつけたところの痛みがあるだけで、意識もはっきりしているし大丈夫かな?と思ったら間違いです。
実は後からゆっくりと悪くなってくる脳の病気があります。
こめかみのところに限らず、頭を強打したあとでゆっくりと時間をかけて出てくる3つの脳の病気について詳しく解説します。
外傷性てんかん
頭を強打した人は「外傷性てんかん」と呼ばれる病気になることがあります。
急に意識がなくなり、全身を硬直させて手足が強く震えだす「けいれん発作」状態になります。
外傷性てんかんを発症する人の約80%が、ケガをしてから2年以内に起こすと言われています。
このことから、頭を強打した人は「ケガをしてから2年間は外傷性てんかんを起こすかもしれない」と思っておいた方がよいでしょう。
慢性硬膜下血腫
特に高齢者の人が頭をぶつけた場合に起こる病気が「慢性硬膜下血腫」と呼ばれるものです。
頭をぶつけた際に脳の細い血管が痛んで、そこからジワジワと時間をかけて出血する病気です。
頭をぶつけた高齢者の方が1~2週間以上経って「認知症」が進んできたり「歩けなくなる」といった症状が出てくれば、病院を受診した方がよいでしょう。
頭のCTの検査をすれば診断がつきます。
たまった血液の量が多ければ手術になることもあります。
またこの慢性硬膜下血腫になる患者さんの中には、頭をぶつけた覚えのない患者さんもいます。
すべって転倒して尻餅をついたというような軽い外傷でもこの慢性硬膜下血腫を引き起こすことがあります。
高齢者の方は注意が必要な病気です。
正常圧水頭症
頭をぶつけた高齢者の方が、数ヶ月経って、
・歩行障害
・認知症
・尿失禁
この3つの症状が出現すれば「正常圧水頭症」の可能性があります。
脳の中には「脳室」と呼ばれる水(脳脊髄液)の溜まっているところがあります。
正常圧水頭症はこの脳室に水がどんどん溜まって水風船のようになってしまい、脳を内側から圧迫することで起こる病気です。
病院を受診して頭のCT検査をしてもらう必要があります。もし正常圧水頭症と診断されれば、脳の中の水をお腹の中に流してあげるような手術(脳室-腹腔シャント術)を行う必要があります。
こめかみに限らず、頭をぶつけた時には様々な注意点があることを解説してきました。頭をぶつけた後でも、例えば外傷性てんかんであれば2年間は安心することができません。
頭のケガは「のど元過ぎれば熱さを忘れる」では済まされない場合もあります。「のど元を通過した」すなわち「頭を強打した」ことを記憶にとどめておくことが一番重要になります。